流行りの言葉にスローフードというのがある。
ファーストフードに対抗してできた造語だ。
ご存知のように、ファーストフードはマクドナルドなどのハンバーガーショップのメニューを一般的に指す。だからか、市民はファーストフードは「高カロリー」と「肥満」とイメージしている。
アメリカ人は、「ただの食事」などに時間をかけずになるべく合理的に済ませ、残りの時間を「より重要な意義あること」に費やすべきだと思っている人が多い。だからドライブスルー(車の中から注文し受け取り、プラス運転しながら食べるシステム)がある。マクドナルドにもある。
その空いた時間はお金儲けとか遊びに使いたいのだ。だとしてもマックじゃあ物足りないから、スナックを必ず食べる。その結果、アメリカは肥満大国と化してしまった。高カロリー食品の早食いで運動不足(車社会なので)じゃあ結果は見えている。
どうでもいいけど、栄養価の高いバランスのとれた食事を摂ることはお金儲けより大切じゃないの?
健康って一番大切じゃあないの?
そんな馬車馬のように働いていても不健康なら意味ないでしょ?
もっとスローダウンしたら?
と、そう思う人もここにもだんだん増えてきた。
それでスローフードムーブメントが起きた。
それは時間をかけて育てられた地元の食材でゆっくり料理をしてゆっくり食べることを意味する。
スローフードとはまた、一般的には家庭料理で、生の素材から心を込めて作った料理のことを指す。要するに普通にある料理のことだ。
例えば味噌汁とか。こんなの日本人なら誰でも作れるでしょ?
ここならスープがこれに当たる。でも果たしてスープを作れる人は何人いるのか。
スーパーに行けば、缶詰のスープが沢山並んでいる。それを買ってくれば簡単ではないか。作るなんで面倒臭い。時間の無駄。そう思っている人が多い。
大体がアメリカ人女性は料理があまり得意ではない。
世界を誇る超広い台所は一般的に綺麗で、意識的に汚れないようにしているらしい。
得意でないし台所を綺麗に保つために料理はしない人が多い。
だったら何故台所があるのか?
それは台所は「暖かくて」「家庭的」な雰囲気をもたらすからである。
↓こんな感じ。綺麗でしょ?どこの家の台所もこんな感じでとにかく広くで綺麗!
数多くの戸棚には箱や缶詰が詰まっている。
ある時うどんの作り方を友人に教えた。
でも「こんな複雑なことはできない」と言われた。
え〜、これが複雑???
じゃあ天ぷらは?
教えてあげたけど
「そんなステップがたくさんある料理は無理」と返された。
自分が見た感じでは、誰がスローフードを実践しているのかは全くもって謎。
職場の女性陣も料理をあまりしない人が多い。
夕食が朝食用のシリアルという時が多いのもアメリカではよく聞く話だ。
それならスローフードなんて言葉は彼らは知らないかもしれない。
もちろん主婦は料理をもっとやっているが日本人女性が作るような手の込んだものは作っていない。彼らは簡略化を好むからだ。
でもそういう食生活を長年続けていくとやっぱりしっぺ返しが来る。
老化に拍車がかかるのだ。
それでもお腹に何を入れるとかあまり気にしていないようだし、相変わらず肥満大国だし、早食い大食い文化である。ついでに基本的な栄養学の知識もない人が多くて目が点になりそう〜!
30年以上この国に住んで思うことは、
アメリカの食文化は貧しい!
これに尽きます。
その点、日本はすごい!
その食文化。
世界で一番じゃあないでしょうか?
自然の恵み豊かな食材で準備した料理には体だけでなく心を癒す力があるように感じる。
「とりあえずなんでもいいから」式の食事では決して得られない。
また昔ながらの家庭料理の価値は大きいのではないだろうか。
それを家族で囲んでいただくことにも大きな意味があるように感じている。
それがやっと見直されてきたようだ。
今ままでは、とにかく経済的に豊かになることが一番重要で、そのため基本的なことをおろそかにする人が増加する一方だった。
現在、生活のペースを落とし、目の前のシンプルで素朴なことに重要性を見いだすことが深い意味での豊かさをもたらすと思う人が増えてきた。
たかが食事、されど食事。
奥義は常に日常にあるように感じる。
注:スローフードとは実は地元の食材や食べ物及び料理方法を推進している組織のことを指し1986年にイタリアで創設された。その後世界に広がりアメリカにも渡って来た。生活のスローダウン化の一部として捉えられている。